木材の基礎知識Wood

木材の用語

  • 元玉

    主伐(伐採)後、枝を切り落として一定の長さに切り分けられます。
    これを玉切りと言い、切り分けられたもののうち、根元のほうを元玉と呼び、上のほうに向かって二番玉、三番玉という順に名前が付けられます。
    玉切りは、造作材2メートル、柱3メートル、梁4メートル、通し柱6メートルなどと決まった長さに切られますが、玉切り次第で価値ある丸太になるかどうか分かれます。

  • 元口

    玉切りされた丸太の根元のほうを元口と言い、梢のほうを末口と呼びます。
    柱や板材など垂直に使用する材は、木が生えていたときと同じで元口を下(根元を下)にし、反対は「逆木」と言われて嫌われます。
    木口の心材(赤身)が多いかなどを見て、元口か末口かを判断します。

  • 辺材

    木口を上から見たとき、外側の色が淡い部分のことです。
    立木のときは、辺材の樹皮に近い部分で根から水分や無機養分などを吸い上げ、樹木全体に向けて通す役割があります。
    心材に比べて含水率が高く、腐朽や蟻害に弱いですが、節の少ない材が取れます。

  • 心材(赤身)

    木の内側の色が濃い部分で、樹木を支える役割を担います。
    形成層でつくられた細胞が辺材となり、時間の経過とともに細胞が死んで心材に変化します。
    このとき、細胞に蓄えられていたでんぷんや糖が化学変化を起こし、色が濃くなります。
    防腐防菌の効果があり、腐朽や蟻害に強く、辺材に比べて含水率が低いことが特徴です。

  • 移行材(白線帯)

    辺材と心材の境界にある白いところで、辺材から心材に変化している部分です。
    心材と同様に水を通しにくいことから、酒樽などに利用されます。
    なお、玉切りして乾燥が進むと見えなくなります。

  • 外樹皮

    樹木が生えるまわりの環境から内部を保護する役割があります。
    外樹皮によって樹種が判別するとともに、樹木の健康状態も把握できます。
    耐久性が高いことから、外樹皮だけをはがして社寺の屋根葺き材として使われます。

  • 内樹皮

    外樹皮と形成層に挟まれた部分で、葉で光合成された糖類などの栄養分を上から下へ向けて運ぶ役割があります。
    内樹皮を樹木一周分を剥がすと栄養分が運ばれなくなり、やがて枯れてしまいます。
    栄養価が高く、動物にとっては美味しい部分のため食害にあいやすいです。

  • 形成層

    細胞分裂を起こし、活発に細胞増殖を行っている部分です。
    木の細胞が分裂すると、形成層の内側にある古い細胞に新しい細胞が付け加わって樹幹が太く成長します。

  • 早材

    春から夏にかけてできた細胞で、細胞の壁の薄いため色が淡く見えます。
    細胞の活動が活発なため、成長スピードが早く、成長量も多くなります。

  • 晩材

    夏から秋にかけてできる細胞で、細胞壁が厚いため濃い色です。
    細胞の活動が穏やかなため、成長スピードが遅く、成長量も少なくなります。

  • 年輪

    春にできる早材と、秋にできる晩材の組み合わせで、1年に一つ、輪ができます。
    これが年輪で、製材にしたときに、木目となって表れます。
    年輪の幅で樹木の年齢や成長スピードがわかります。

  • 柾目

    年輪の方向に対して直角に切断すると、年輪の層が平行な縞模様になって表れます。
    これを柾目と言い、材木断面の一部にしか取れません。
    柾目は、木表と木裏の収縮率の差がないので、ねじれや反りが少ないことが特徴です。

  • 板目

    年輪の円周方向に沿って切断すると、年輪の層が筍のような曲線模様になって表れます。
    これが板目で、柾目に比べて多く取れます。
    木表と木裏の収縮率の差が大きいため、木表側が凹むように反ります。

  • 木表

    樹皮に近い側を言います。
    円周方向と半径方向の収縮率の違いで、乾燥が進むと木表側が凹むように反ります。
    ササクレが立ちにくいので、人が触れる床や壁などに使われる板材は木表側が室内の内側へ向けます。

  • 木裏

    樹心に近い側を言います。
    木表側に引っ張られて変形し、割れが入ることが多くあります。
    古い木目と新しい木目が剥がれてササクレ立ちやすいので、人が触れないように使用します。

木材乾燥のメカニズム

森から切り出されたばかりの木は、内部に多量の水分をため込んでいるため、そのまますぐに建築材として使用できるわけではありません。伐採され、玉切りにされた木は、何もしなくても水分が抜けていきます。

ただし、その乾燥過程において、縮んだり、ねじれたりを繰り返します。すなわち、収縮や変形が起こるのです。
したがって、しっかり乾燥させ、じゅうぶんに内部の水分を抜いて建設現場に持ち込まないと、建物が出来上がったあとも乾燥が続いて収縮と変形を繰り返し、木材に狂いを生じさせる原因となります。

床鳴りの原因の多くは、未乾燥材の収縮によるものと言われています。木材は、乾燥が進み、水分が抜けると収縮したりねじれたりします。収縮だけではなく、ねじれも生じさせる原因は、木材の方向によって収縮率が変わる繊維にあります。木材の繊維の収縮率は、半径方向に比べて円周方向のほうが大きく、均一ではないのです。
これにより、ねじれや割れが引き起こされるのです。

天然乾燥と人工乾燥

建築用の木材は、じゅうぶんに乾燥させないとなりません。かつて、木材の乾燥は、風と通しの良い場所に置いて、水分が自然に抜けるのを待つ天然乾燥が全てでした。
しかし、近年は、木材を人工的に乾燥させる設備が開発され、乾燥期間が長くかかりるという天然乾燥のデメリットを克服できるようになりました。また、天然乾燥に多く見られる品質のばらつきも、人工乾燥によって安定した品質を保つとともに、計画的な生産も可能になりました。
ただし、天然乾燥の特徴である木材本来の色ツヤが、人工乾燥では変色してツヤが損なわれてしまうというマイナス面もあります。さらに、天然乾燥では木材本来の香りが残りますが、人工乾燥では焦げ臭くなってしまいます。

背割れにまつわるエトセトラ

木材を乾燥させる過程で、どうしても起きてしまうのが、表面が割れてしまう「干割れ」という現象です。
そこで、乾燥収縮によるゆがみを一ヵ所にあらかじめ集めれば、それ以外の部分には割れは生じないのではないか、という発想をもとに、古来から施されてきたのが「背割れ」という加工です。ある実験によると、乾燥による干割れが生じていない木材よりも、干割れが生じているもののほうが物理的に強い傾向にあるとわかりました。木材が割れているということは収縮率が大きく、その分、木材の密度が高まっているということの証でもあるのです。