住まいづくりの要素House

屋根

  • ■勾配屋根

    雨が多く降る日本では、雨水を早く排水するために傾斜をつけた屋根が発達してきました。

    傾斜角度をつける急勾配屋根は雨水が早く流れ落ちるので雨漏りなどがしにくくなりますが、施工費やメンテナンス費が割高になります。

    緩勾配屋根は雨水の流れが遅くなりますが、落雪防止などの目的で雪国などでは多く採用されています。

  • ■瓦屋根

    日本の瓦の歴史は飛鳥時代までさかのぼり、日本の気候風土に適した建材のひとつです。

    瓦と屋根面の間に空気層ができ、瓦自体も熱を伝えにくい性質のために夏の熱気や冬の冷気を屋内に伝えにくいことから、一年中快適に過ごせるのです。

  • ■深い軒

    降雨や太陽光から外壁を保護します。

    また、軒がないと夏季には外壁や窓に直射日光が当たり、室温が上昇する原因にもなります。

    冬季は日射角度が低いため、軒が陽射しを遮ることはないので、室温を下げる原因にはなりません。

外壁

  • ■板壁

    板張りの壁は、もともと外壁の塗装面を風雨から保護することが目的で用いられている外壁仕上げです。

    板を横長に使って張り重ねる横羽目と、縦長に並べる縦羽目とがあり、合板など方形のものは、碁盤または互い違いの目地をつくり、すきのあかないように張り継いでいきます。

    横羽目の一種に、上側の板の下端と下側の板の上端とを羽重ねにして張る方法があり、これは下見板張りと呼ばれます。

  • ■漆喰壁

    漆喰は、壁に塗ると風雨に弱い土壁そのままに比べて防水性が増すほか、不燃素材であるため火事に強く、外部保護材料として古くから用いられてきた建築素材です。

    また、外壁だけではなく内壁にも使用でき、調湿や脱臭などの効果があり、音が通りにくくなるので防音性も上がります。

  • ■うだつ

    家屋が隣りあって連続して建てられている場合、隣家からの火事が燃え移るのを防ぐための防火壁です。

    江戸時代ころには装飾的な役割となり、うだつを上げるためには出費が必要で、京阪地方では財力を誇示ために豪奢なうだつが競ってあげられたそうです。

    このことから、出世できずに生活が向上しないことをたとえる「うだつが上がらない」の語源のひとつと言われます。

開口部

  • ■天窓、高窓

    天窓は天井面に設け、高窓は壁の上部につくり、ともに、採光や排熱、通風などに効果があります。

    特に高窓は、住宅が密集していて開口部をつくることが難しい場合、外からの視線を避けながら、効果的に採光したり、通風を確保でき、現代の建築物に適した窓のひとつです。

  • ■地窓

    床面に接して設ける窓のうち、高さが低いものを言います。

    室内の対角線方向に向き合う高窓と組み合わせると、自然換気に効果があります。

    また、庭など戸外を鑑賞する機能も持ちます。

  • ■掃き出し窓

    下部分が床面に接し、鴨居の高さまで開いている窓を指します。

    もともとは、室内のごみを外部に掃き出すための小窓でしたが、現在では人が出入りできるほど大きな窓でも掃き出し窓と呼びます。

  • ■雨戸

    雨風を防ぐために、ガラス窓などの開口部外側に取り付けられる板戸のことです。

    また、構造的に頑丈にできていて、開錠が内側からしかできないため防犯の効果があるほか、金属素材で作られている雨戸は防火にも有効的です。

    雨戸と窓ガラスの二重構造となり、防寒効果も高まります。

  • ■格子

    細い角材を縦または横、縦横の碁盤の目に隙間を開けて組み、窓や扉などに取り付けます。

    外部からの進入と視線の制御をしながら、採光と通風を確保する効果があります。

  • ■吹き抜け

    2つ以上の階にまたがって天井がなく、上下がつながっている空間を言います。

    床から天井まで高さがあって広々として開放感があり、窓が高い位置にあるので部屋の奥まで光が入ります。

    また、上下階のコミュニケーションや空気循環を促します。

建具

  • ■襖

    木の骨組みに下地の紙を貼り、表面に紙または布、周囲に化粧縁を取付けて仕上げた間仕切り用の引き戸です。

    部屋の格式を示したり、装飾のために、襖紙や引手にはさまざまな意匠が施されます。

  • ■引戸

    左右にスライドして開け閉めする扉の総称です。

    開閉に必要な空間が必要なく、開閉操作にともなう身体の動きが少ないといった長所が挙げられます。

  • ■障子

    木枠に紙を張った建具を言います。

    古くは、襖や板戸なども障子と言い、桟の間に紙を張って採光に役立つものを明り障子と呼びましたが、今では明り障子のことを単に障子と言います。

    下半分がガラスになり、障子部分が開け閉めできるものを雪見障子と呼ぶ風流なものもあります。

  • ■欄間

    部屋と部屋、部屋と縁側などの境目にあたる、天井と鴨居の間に設ける飾りを言います。

    採光や換気を目的に障子や格子が使われ、装飾を目的に透かし彫りなどの彫刻を施した板を嵌め込みます。

内部空間

  • ■玄関

    住まいの主となる入り口で、昔は家の格式を表すものでもありました。

    現代の住宅でも「家の顔」であり、家の第一印象を決めるほど大切な部分ではありますが、下駄箱や収納ボックスなど最小限の機能を持たせるにとどめるものも一般的になっています。

  • ■縁側

    建物の縁部分に張り出して設けられる板敷きの廊下状の通路です。

    部屋の出入りの動線や部屋の補助スペースとして利用するほか、面する庭から屋内に上がることもできます。

    縁側と部屋の間を障子で仕切る二重構造となり、寒さや外環境の影響を小さくすることもできます。

  • ■畳

    日本の住まいである和室を象徴する、伝統的な床材です。

    畳床は空気を含んだ状態になっているので調湿機能があり、二酸化窒素を吸着し部屋の空気を浄化する能力もあるほか、防音や断熱、鎮静といった効果も持ちます。

  • ■板の間

    木板を張った床で、樹種、板厚や板巾、塗装の種類などはざまざまあり、その組み合わせで触感や部屋の印象が大きく異なってきます。

    和風建築では板の間、洋風建築ではフローリングと一般的には言われます。

  • ■土間

    作業場赤土・砂利などに消石灰とにがりを混ぜた三和土や土などで仕上げた床の屋内空間で、もともとは、冷や水を多く使う炊事場だったり、履物を脱がずに農機具や漁具の手入れを行う作業場だったりしました。

    現代住宅では、屋外と屋内の境にある玄関などに限られてきています。

意匠・装い

  • ■真壁

    柱や梁など構造材を表面に見せる作り方をした壁を言います。

    構造材以外の部分は土壁や面材を下地とし、その後、塗り壁や壁紙などで仕上げていきます。

    柱が表面に出て空気に触れているので防腐面に優れ、耐久性が高いと考えられている工法です。

  • ■大黒柱

    元来、家屋の構造上重要な中心付近に立つ太い柱のことを言い、家格の象徴としての意味も含んで設けられます。

    太い柱に豊穣の神である大黒天を祀ったことから、大黒柱という名称が付きました。

  • ■床の間

    座敷より床を一段高くし、正面の壁に掛軸を掛け、床の上に花瓶や置物などを置いて飾り鑑賞する場所です。

    客間の一角に設える場合が多く、構成要素や形式が決められていますが、最近では自由な発想で四季折々の花や掛け軸を飾る場所として、さまざまな工夫をする事例も増えています。

  • ■仏壇、神棚

    仏壇は祖先を祀って思い出を顧みるところであり、神棚は家内安全や家運隆昌を祈るためにあります。

    仏壇の作りや装飾は宗旨によって異なり、神棚は祀る場所と方角に注意を向ける必要があります。

    いずれにしても、こうした場所を住まいの中に設えるのは、日本の文化であると言えます。

素材

  • ■土壁

    竹や木で組んだ格子を下地に土を塗り重ねた壁のことです。

    土の成分の違いや砂の混ぜ具合などにより、さまざまな色や手触りに仕上がります。

    湿気を吸収する性質があるので夏は涼しく、暖房の熱を蓄える性質もあり冬は暖かいという効果もあります。

  • ■自然素材

    住宅は、木、竹、土、石、紙など、ざまざまな自然素材を使用してつくられます。

    また、住宅を建てる近くで調達される木材や石などは地域産材と呼ばれます。

    地域産材を使うと、地域経済の活性のほか、材料の輸送にかかるエネルギーの低減にもつながります。

戸外

  • ■濡れ縁

    木板や竹などでつくる建物の外部に設けられる縁側を言います。

    現代の住宅では、同じようにウッドデッキも採用されるようになりました。

    濡れ縁は腰かける程度の小さな幅であるのに対し、ウッドデッキはテーブルやイスを置けるほど大型のものを指します。

  • ■植栽

    住宅の庭や周辺に植える木は、鑑賞や修景のほかに、日材を遮ったり風を防ぐ目的もあります。

    また、柿や蜜柑などの果実を植えて食料にしたり、材木や薪を確保したりと、さまざな用途のために植えられます。

  • ■坪庭、中庭

    建物に囲まれた小さな庭を言い、採光や通風、鑑賞などを目的に設えます。

    坪庭の起源は、間口が狭く奥行きの深い京町家といわれ、垣根などで囲って、草花や木、竹、飛び石、灯篭などを配置するのが一般的です。

  • ■前庭

    公道から門、門から建物にかけて作られた庭を指します。

    住まいに人を迎える導入場所であると同時に、地域にも開放されて半公共的な機能の役割を担うこともあります。